2003年度意見書・要望書
「心神喪失者等医療観察法修正案」 の参議院審議にあたっての見解
現在、参議院で継続審議中である「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法案」は、以下のような重大な問題をはらんでいます。すなわち、①精神障害者の他害行為が予測可能であるという重大な誤謬に基づいて作られたものであること。②司法と精神医療の間にある当面最大の課題である起訴前鑑定や措置入院のあり方などは一切不問に付されたままであること。③適正な精神保健・医療・福祉を受けられる環境をまず整えてほしいという精神障害者の声に真摯に応えることなく、特殊な領域の問題だけを優先課題として取り出し、国民の目を本質的な問題解決から逸らすものであることなどです。
私たち、精神保健従事者団体懇談会(19団体)は、精神保健・医療・福祉に従事する立場から本法案に重大な疑念を持ち、去る2002年5月14日、法案の成立に反対を表明しました。
さて、法案は衆議院法務委員会と厚生労働委員会の連合審査会で激しい議論を呼び、さまざまな問題点が浮き彫りにされました。しかし、自民党から修正案が出され、審議が極めて不十分なまま、衆議院本会議で可決されてしまいました。しかし、この修正案は各方面から指摘された問題点を言辞によってあいまいにしたに過ぎず、本法案に潜む本質的な問題は残されたままです。
今、本法案が良識の府である参議院で審議されようとする時にあたって、私たちはまず徹底審議によって、関連する問題をあらゆる側面から究明することを要請します。衆議院で明らかになった本法案の孕む矛盾点が修正案で本当に解決されるのか、我が国の精神保健福祉施策にとっていま何が最優先されるべき課題なのかが、真っ正面から審議されるべきです。そのことによって、このような新法を作る前に行うべき、しかも直ちに実現できる施策が数多く生み出されるはずです。
2003年3月
精神保健従事者団体懇談会