第6回フォーラムプログラム

2009年7月12日

精神保健従事者団体懇談会

「第6回精神保健フォーラム」宣言

 私たちは、近年の精神保健・医療・福祉、さらには広く社会保障全般をとりまく深刻な状況に対して大きな危機感を抱きながら「第6回精神保健フォーラム」に集いました。  
 このフォーラムを主催する精神保健従事者団体懇談会(精従懇)は、精神保健法成立の前年(1986年)に創立しました。それから20年以上が経過する間に、精神保健・医療・福祉に関する制度と環境は少なからず変化しました。しかし今なお満足すべき状況からは遠く、精神障害のある人に対する差別や偏見、そして生活の実態は相変わらず厳しいものがあります。
 特にこの数年、精神保健・医療・福祉の枠組みをめぐる大きな変化が相次ぎ、当事者とその家族、そして従事者は対応に追われました。しかもこれらの制度の変化が、精神障害のある人にとってよりよい生活をもたらすものだったのかどうか、現状を見る限り辛口の評価をせざるを得ません。  
 2006年にスタートした障害者自立支援法体制は、障害の種別を問わず福祉サービスを一元化した点や、福祉サービスの実施主体を住民に身近な市町村に移した点で画期的でした。一方で、精神障害領域の特殊性と後進性が、いわば一元化の副作用として際立ってしまうなど多くの課題を残し、今後の法改正にあたってきめ細かい目配りが必要です。また介護保険との将来的統合を見越した当初の構想が事実上挫折したことによって、「税か保険か」「応益負担か応能負担か」という財源論を含む障害者福祉の基本的考え方自体が再検討を迫られています。
 根強い批判のなかで2005年に施行された心神喪失者等医療観察法は、今日までの運用で様々な問題が表面化しつつあります。法の見直し時期を控え、この制度が精神障害者と地域精神保健医療、そして市民社会に何をもたらしたのか、立法の理念から問い直す議論が求められています。  
 一方国際社会では、2008年5月に「障害のある人の権利に関する条約」が発効し、日本も批准の準備段階に入りました。批准にあたって、関連する国内法の見直しや改正を国がどこまで掘り下げて行うかが注目されています。私たちは、本格的な議論を避けて拙速に批准するのではなく、これを障害者に関する国内制度改革のための好機と位置づけ、本腰を据えて取り組むべきであると考えます。  
 特に精神保健福祉法については、2005年改正では重要な懸案をほとんど先送りした経緯があります。次期改正こそ正念場と捉えて、論点整理を急がなければなりません。
 こうしたことに加えて私たちは、近年世界規模で広がる経済危機が、社会保障全般に暗い影を落としていることを深く思わずにはいられません。今日、地方自治体の財政はいずこも逼迫し、いたるところで障害者福祉施策へのしわ寄せが問題となっています。そして社会全体の経済的疲弊は、精神障害者はもとより社会的に弱い立場の人に最も苛酷な状況を強い、そうしたなかで年間3万人を超える人が自ら命を絶っています。私たち精神保健・医療・福祉関係者は「自殺問題」と正面から向き合い、私たちがなすべきこと、できること、そしてその限界などを真剣に議論し、社会に向けて発信しなければなりません。
 私たちは以上のような厳しい状況を変革する道を探るためにこのフォーラムに集いました。現状は確かに楽観を許さないものがあります。それでも私たちは決して希望を失ってはなりません。このような時だからこそ、精神障害者とその家族、そして一般市民を含む多くの精神保健・医療・福祉関係者が、職種、職域、専門性を超えた連携の絆を強めることで、メンタルヘルスの領域全体を覆う危機を好機に変える知恵と力が生み出されるものと信じています。私たちは、危機の時代にあっても精神障害のある人を含むすべての市民が人間らしく暮らせる社会の実現を目指して、日々の営為を検証し、改革の歩みを続けることをここに宣言します。



第6回精神保健フォーラムプログラム


基本テーマ:危機のなかで人間として生きる権利を!   
ー精神保健・医療・福祉の新たな地平に向けてー


会   期:2009年7月11日(土)~12日(日)
会   場:日本教育会館一ツ橋ホール 東京都千代田区一ツ橋2-6-2
主催:精神保健従事者団体懇談会(精従懇)


    国立精神療養所院長協議会、全国自治体病院協議会精神科特別部会、
    全国精神医療労働組合協議会、全国精神障害者社会復帰施設協会、
    全国精神障害者地域生活支援協議会、全国精神保健福祉センター長会、
    全国精神保健福祉相談員会、全国保健・医療・福祉心理職能協会、
    全日本自治団体労働組合衛生医療評議会、地域精神保健・社会福祉協会、
    日本作業療法士協会、日本児童青年精神医学会、日本集団精神療法学会、
    日本精神保健福祉士協会、日本精神科看護技術協会、日本精神神経学会、
    日本総合病院精神医学会、日本病院・地域精神医学会、日本臨床心理学会、
    日本精神保健看護学会(以上20団体 50音順)

代表幹事:岡崎 伸郎(日本精神神経学会)
木太 直人(日本精神保健福祉士協会)
金杉 和夫(日本病院・地域精神医学会)

開 催 趣 旨
 精神保健従事者団体懇談会(精従懇)では、これまで精神保健法改正などの節目に精神保健フォーラムを開催し、精神保健・医療・福祉のあり方についての提言を行ってきました。前回は「脱施設化とノーマライゼーションの実現」をテーマに、2004年7月に実施しました。
 脱施設化については、その後の障害者自立支援法の成立で入院患者の地域移行促進が事業化されるなど、不十分ながらも一定の進展が見られ、市民のノーマライゼーションの意識も少しずつ向上してきています。しかし、昨年来のアメリカ発の世界的な不況による経済危機は、社会保障全般に新たな暗い影を落としています。派遣切りなどによってさらに深刻化しつつある貧困問題、一向に減らない自殺、そして財政逼迫の中で障害者福祉政策の後退も懸念されています。こうした状況を受けて、第6回精神保健フォーラムでは「危機のなかで人間として生きる権利を!」のテーマで、直面する様々な危機から脱却する新たな方向性を見いだしたいと考えています。
 精神保健・医療・福祉に携わる方々、当事者・家族の皆様、一般市民の方々など、多数のご参加を期待しております。        

第1日目 2009年7月11日(土)
<午 前 の 部>
□基調報告「精神保健・医療・福祉の転換期における「精従懇」の使命

報告:岡崎伸郎(精従懇代表幹事)

□招待講演1
「経済危機とこれからの社会保障のゆくえ」

座長:中村春基(日本作業療法士協会)

講 師:西村 周三(京都大学副学長)
<午 後 の 部>
□シンポジウムⅠ
「どうしたい 『障害者・自立・支援・法』」

 障害者自立支援法が施行され、実際は何がどう変わったのだろうか? そして今年3年目の見直しが行われどうなっていくのだろうか? と、黙って見守っている場合ではありません。
 現場で利用者が、事業者が、地域の住民として誰もが生きやすくなるために今わたしたちに何ができるのか、障害者とは、自立とは、支援とは、そして法とは? と各々の立場から検証します。現状をしっかり掴んで、この改正をどう読むか、さらに今後の活動にどう活かしていけるのか、一緒に考えましょう。

シンポジスト

  1. 「あみ全国調査からみえたもの」
                伊澤雄一(全国精神障害者地域生活支援協議会)
  2. 「自立支援法は健保医違反?」
                藤岡 毅(自立支援法訴訟弁護団)
  3. 「精神障害者の望む自立」
                山口弘美(日本病院・地域精神医学会)
  4. 「精神障害者の望む支援」
                増田一世(やどかり情報館)
    コーディネーター 尾上義和(NPO法人アシストセンター介)
    加藤房子(全国精神障害者地域生活支援協議会)


□シンポジウムⅡ
「医療観察法の光と影~施行4年目を迎えて」

 賛否両論のなかで制定された医療観察法は、2005年の施行後まもなく4年を迎えます。
長い間精神保健福祉法の下で医療の対象とされてきた重大な他害行為を行った精神障害者は、この法律の施行後、その処遇が地方裁判所の審判によって決定され、これまでとは異なった仕組みの中での治療と社会復帰の機会が与えられることになりました。
 施行後、さまざまな立場の人々がこの法律に関わってきましたが、果たしてこの法律にはどのような利点があり、どのような欠点があるのだろうか、施行後ほぼ4年を経てそろそろ見えてきたことも多いのではないでしょうか。
 本シンポジウムでは、医療職、保健福祉職あるいは法律家としてこの法律に実際に携わってきた関係者に運用の実情、評価、今後の課題などについて述べていただき、今後この法律にどう向き合っていくべきなのか、一緒に考える機会としたいと思います。

シンポジスト

  1. 「医療観察法がもたらした諸問題について」
                        岩尾俊一郎(兵庫県立光風病院)
  2. 「保健福祉の立場から」
                        伊東秀幸(日本精神保健福祉士協会)
  3. 「法律家の立場から」
                        山下幸夫(東京弁護士会)
    指定発言               稲村義輝(横浜保護観察所)
    コーディネーター          伊藤哲寛(日本精神神経学会)
                        金田一正史(全国精神保健福祉相談員会)

第2日目 2009年7月12日(日)
<午 前 の 部>
□シンポジウムⅢ
「このままでいいの? 精神障害者の人権と暮らし」

 今、日本国内では精神障害者の地域移行が精神医療福祉の重要な政策課題となっています。この課題を「権利」という切り口で捉え直してみると、地域でごく普通に暮らすことを妨げられてきた人々は、長年にわたり「人間として生きる権利」を奪われてきたと言えます。その重大な権利侵害に、国も、精神保健に従事するわたしたちも、そして市民も加担してきたのだという自覚を求められます。これらの人々の失われた時間と尊厳、損なわれた権利をいかに取り戻していくのかが問われているのです。
 本シンポジウムでは、2006年に国連で採択された「障害者権利条約」に焦点をあてます。条約について学び、国内法における問題点を確認し、障害のある人の権利保障のための法制度体系の再構築に求められること、そして、わたしたちが実践において問われているもの(支援の視点、障害観等)を明らかにすることを目的として意見交換を行います。

行政報告 「国連での採択に至るまでの経緯と条約の概要」
                 志野光子(外務省総合政策局人権人道課)

シンポジスト

  1. 「自分なりに考える権利条約」   山本真理(全国「精神病」者集団)
  2. 「権利条約と国内法の課題」    三宅祐子(福祉新聞記者)
  3. 「現場実践で問われるもの」    岩崎 香(日本精神保健福祉士協会)
    コーディネーター           藤井克徳(日本障害者協議会)
                         木太直人(日本精神保健福祉士協会)

□招待講演2
「自殺予防と精神医療ー精神科医療への問題提起ー」

座長:吉浜文洋(日本精神科看護技術協会)
講 師:清水 康之(NPO自殺対策支援センター「ライフリンク」代表)

□総括討論・危機のなかで人間として生きる権利を!

司会:金杉 和夫(日本病院・地域精神医学会)
佐久間えりか(日本精神保健看護学会)