第3回フォーラムプログラム
「第3回精神保健フォーラムプログラム 横浜宣言」
わたしたちは、ここに精神保健医療福祉に従事する者として、その実践理念の根本的転換を確認する。すなわち、管理的なパターナリズム(保護主義・社会防衛主義)からノーマライゼーションへの転換である。
精神障害者も喜びや悲しみを感じながら生きる一人の存在であって、威厳をもった人間として復権すべきである。病や障害を抱えながら、地域の人々と共に暮らすことは、すべての国民の普遍的権利である。
わたしたちの見解を以下に掲げ、本フォーラムの宣言とする。
- 精神障害者の人権擁護の徹底 最近の大和川病院(大坂)、栗田病院(長野)などの精神障害者への人権侵害事件は、日本国民にとって重大な汚辱であり、こうした事件を生む要因を精神保健医療福祉の領域から根絶していくことがわたしたちの責務である。これが今回の法改正の重大課題の一つでなければならない。
具体的には、以下の項目の実現を今回の法改正に求める。
①精神保健福祉法の目的への「精神障害者の人権尊重」の明記。
②精神医療審査会機能の拡充と行政からの独立。
③精神医療における情報開示の推進および精神障害者権利擁護制度の新設などによる精神病院の密室性の打破。
④医療法上の精神科特例の廃止。精神医療の質の抜本的改善。
⑤非自発的入院をする際の医療環境等の施設基準の強化および手続きの厳密化。
⑥精神医療におけるインフォームド・コンセントの確率
⑦保護者制度における監督義務の廃止。精神障害者人権擁護の視点からの成年後見制度導入の促進。
⑧諸法令における欠格条項および自治体条例における諸制限の撤廃。 - 社会資源の充実と地域生活に密着した精神保健医療福祉の確立
現在の日本で圧倒的に遅れている精神障害者の福祉を整備・拡充し、膨大な社会的入院を解消するとともに、地域社会における生活の充実を図ることが当面するもう一つの急務である。そのためには、
①各市町村に「精神保健福祉担当課」を必置とし、「市町村障害者計画」に精神保健福祉施策を盛り込むことを推進する。それと関連して、ホームヘルパー派遣事業・小規模作業所・生活支援センター事業等を法定化するべきである。また、「障害者プラン~ノーマライゼーッッション7ケ年戦略~」については、社会資源の拡充を図るべく、数値目標を一段と高めるための充分な予算措置を講ずる必要がある。
②一方、精神医療に関しても「精神保健福祉圏域」と同様の圏域を設定し、これを軸に、救急・合併症医療のネットワーク形成を促進する。これと前記の市町村単位の福祉サービスが充分に連携することが、地域ケアにおける要となる。これを推進する母体として、各圏域に当事者を含めた「精神保健福祉推進協議会」の設置を法定化するべきである。 - 「障害者福祉法」による障害者施策の一本化
現在、精神障害を含めた「障害者福祉法」の成立が求められている。それによいr、精神障害者福祉の圧倒的な遅れが抜本的に改善されなければならない。これが成就した時には、現行の精神保健福祉法は新たな視点から見直されるべきである。その際には、メンタルヘルスの諸課題に対するより積極的な対応も検討されなければならない。この意味でも、今回の法改正の際に、期限を決めた「見直し条項」を附記するべきである。 - 社会福祉財政の適正な確立
精神保健医療福祉におけるノーマライゼーションの徹底化には、当然、適正かつ充分な財政的裏づけが必要となる。従来の精神障害者に対する精神保健医療福祉諸施策の圧倒的遅れを補償することは国の責務であり、当面する財政構造改革特別法の見直しにあたって、この点への充分な配慮がなされるべきである。 - 精神保健医療福祉の実践の質の向上
最後に、この転換期にあたり、わたしたち精神保健医療福祉従事者も、旧来の管理主義的な実践のあり方から多職種間のチーム形成に基づく共感的・支援的援助へと、大きくその実践の質的転換をはからなければならない。このためにも、臨床心理技術者などの国家資格化が早急に実現される必要がある。
わたしたちは、こうした実践の態度転換の必要性を深く自覚し、その上でわたしたちの実践の質を相互教育・相互点検を通して早急に高めていかなければならない。わたしたちの実践が真に国民の信頼を獲得するためには、以上の観点から、まず医療の質を高めること、同時に保健・福祉もそのサービスの質を高めること、が不可欠であることをわかしたちは強く自戒する。
なお、わたしたちは、今回の国内フォーラムの確認にもとづき、各地で活発な活動をおこない、2年後をめどに精神保健法改正にむけての第2回国内フォーラムを開催する。
1998年6月20日
「第3回精神保健フォーラム」
参加者一同
第3回フォーラム プログラム
開会の挨拶 吉川 武彦
シンポジウムⅠ 「精神保健法」改正をめぐって
司会:樋田精一
ⅰ 「大和川病院事件を通じて見た精神保健福祉法の問題点」 丸山 哲男
ⅱ 「精神保健福祉法撤廃と精神障害者復権への道」 久良木幹雄
ⅲ 「精神保健・医療・福祉をどう考えていくか」 調 一興
ⅳ 「精神保健福祉法の改正に向けて」 白澤 英勝
指定討論
① 「障害者ケアは社会的責任~保護者制度の撤廃を望む~」 荒井 元傳
② 「現行法は医療と福祉の充実のためにそれぞれ分離すべき」 原田 憲一
討論1
シンポジウムⅡ-基調シンポジウム-
精神保健・医療・福祉の方向-国際比較に立って-
ⅰ 「精神保健法改正に関しての利害関係の調整」 Mr.Gilbert Sharpe
ⅱ 「精神保健改革-21世紀に向けての評価」 Prof.David N. Weisstub
ⅲ 「日本の精神保健福祉システム」 篠崎 英夫
ⅳ 「わが国の精神保健。医療・福祉の方向」 森山 公夫
討論2
シンポジウムⅢ わが国のメンタルヘルスの現状
司会:森崎
ⅰ 「思春期のメンタルヘルス」 重松 正典
ⅱ 「職場のメンタルヘルス」 島 悟
ⅲ 「老年期のメンタルヘルス」 室伏 君士
ⅳ 「家族のメンタルヘルス」 斎藤 慶子
指定討論
①「サポートの原点を問う」 大石 敏寛
②「地域のメンタルヘルス-いま、何が問われてるか-」 吉川 武彦
討論3
シンポジウムⅣ 21世紀を展望する実践モデルの模索と新たな活動
司会:金子晃一
ⅰ 「総合病院精神科の参加による地域精神医療保健福祉システムの構築」 佐藤 茂樹
ⅱ 「どんな障害があっても一人の市民-普通に暮らせる町づくり-」 宮川 齊
ⅲ 「保健所における地域精神保健福祉活動の実践」 三代 浩肆
ⅳ 「医療と福祉の関係をめぐって-医療と福祉の関係はどうあるべきか」 藤井 克徳
ⅴ 「21世紀に求められる精神医療-二次医療圏域設定とチーム医療-」 中島 豊爾
ⅵ 「障害者の生活支援-十勝地方における実践から-」 門屋 充郎
指定討論
①「地域に向けた実践活動と今後の課題」 小林 美治
討論4
Ⅴ 総括討論
司会:金杉和夫・高橋 一