2025年度 声明

 わが国の精神医療は、病床数、長期入院者の多さがかねてより指摘されてきたが、社会保険料負担軽減に向けての病床削減が与党(当時)の社会保障の 3 党合意を踏まえた骨太方針 2025に織り込まれ、令和6年度補正予算による病床数適正化支援事業に続き令和7年度補正予算にて病床数の適正化を進める医療機関を対象とした財政支援が決定されるなどし、新たな地域医療構想に先んじて精神病床も含めた病床削減の動きが出てきている。これは、稼働していないベッドを削減した医療機関に 1 床当たり 410 万円(休床の場合 205 万円)の財政支援を行うというものである。
 これらは経済上の“国民負担の軽減”ということに端を発しており、そのこと自体は理解できる面もあるが、重要なのはその結果、いわゆる精神科特例に代表されるような人手不足が常態化した精神医療の質をいかに向上させられるか、地域における医療をどのように充実させていくかなどの問題である。そのような意味においては、病床削減に対する財政支援が先行して決定しているが、あるべき精神保健医療福祉のあり方の議論はこれからであるとも言える。
 医療法が改正され、新たな地域医療構想においては、外来も含めた地域での医療提供の適正化が含まれるはずであり、地域で生活を支える福祉サービスということを視野に入れた構想を求める。そしてそれを通じて、各地における障害保健福祉サービスの充実を含め地域包括ケアシステムの構築を実現していくべきである。
 国は、精神疾患に係る入院医療に関する方向性として、多職種による手厚い医療をうたっているが、精神保健福祉士、作業療法士などが配置されたとして、それが看護職の不足を補うだけに終わることのないように求めたい。それぞれの職種が専門性を発揮し、質の高い医療の提供が行えるようするべきである。また、専門職の確保が困難な時代にあって、職員の病気、出産、育児、家族介護による休業等が必要となることを前提として、そのような事態にも柔軟に対応した診療報酬上の施設基準の設定が必要である。
 我々精神保健従事者団体懇談会(精従懇)は、1986 年(昭和 61 年)の発足以来、精神障害者の人権を守り、「生活」を支える精神保健医療福祉の実現を目指して活動を続けてきた。現在、精神保健医療福祉の現場では、人的資源を含む体制の充実が必ずしも十分とはいえない状況のなかで、従事者・患者(利用者)の双方にとって望ましくない状況が生じていることが指摘されている。身体拘束をはじめとする課題については、精神障害者の権利擁護の観点から、引き続き慎重な検討と改善の取り組みが求められている。
 一方で、現行制度のもとにおいても、行動制限の最小化や身体拘束のゼロを目指した実践など、現場におけるさまざまな努力と創意工夫が積み重ねられていることも重要である。
 我々は、こうした現場の取り組みを広く共有するとともに、精神障害者の権利擁護と質の高い精神保健医療福祉の実現に向けて、制度面および実践面の双方から検討と改善が進められることを強 く期待する。

2026年3月28日
精神保健従事者団体懇談会