第8回精神保健フォーラム 宣言

 私たちは本日、精神保健従事者団体懇談会主催の「第8回精神保健フォーラム」に集いました。
 精神保健従事者団体懇談会は1986年の発足以来、精神保健・医療・福祉の改善を図ることを目的とした活動を行ってきていますが、40年近く経った今、私たちはどのような地点にいるのでしょうか?
 1958年の厚生事務次官通知の“精神科特例”は2000年の医療法改正により医療法施行規則に組み込まれました。2011年に精神疾患が5疾病5事業に位置付けられましたが、地域医療構想に精神科は含まれることはなく、独自の道を歩み続けています。2014年の精神保健福祉法改正では医療保護入院の保護者制度が廃止となりましたが、家族等同意という形でその枠組みは維持されたままです。
 このような構造の下、精神科病院は6割以上が1年以上の長期入院者、6割近くが65歳以上の高齢者といういびつな形になってしまっています。精神保健従事者団体懇談会の発足は、宇都宮病院事件のあった時期に遡りますが、40年近く経った現在においても未だに、神出病院、滝山病院などにおいて患者さんの人権を侵害する事件が起きていることは極めて大きな問題であり、私たち従事者にとっても当然の倫理観、人権意識が強く求められるところです。
 我が国は、既に2014年に障害者権利条約に批准しており、同条約第4条“一般的義務”では、「締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する」としています。
 私たちは、障害者権利条約批准国に相応しい精神保健医療福祉体制を構築していかなければなりません。そのためには、精神保健医療福祉の構造問題を1つ1つ解決し、時代に相応しい法制度を構築していく必要もあります。
 私たちは、今まで以上に、精神保健医療福祉に関わる者として、現場や制度の中にある差別を見逃さず、障害をもった方のニーズに応え、健康を作り出す従事者として日々邁進し、今般の改正精神保健福祉法の実施状況を注視しつつ、法や制度のあるべき姿を追求することをここに宣言します。


2024年3月23日

第8回精神保健フォーラム参加者一同



第8回精神保健フォーラム

日時:2024年3月23日(土)10:00~16:30
場所:ビジョンセンター東京八重洲 ビジョンホール

<プログラム>

10:00~10:10

開会挨拶

10:10~11:10

講演1「精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立の実現に向けて」
池原 毅和(日弁連 精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立実現本部本部長代行)

11:20~12:20

講演2「なぜ日本では精神科病院は「生存」の場であることをやめられないのか ~精神医療史研究の立場から~」
後藤 基行 (立命館大学 大学院先端総合学術研究科 准教授)

13:20~14:00

行政説明「精神保健医療福祉の動向 ~改正精神保健福祉法の施行事項を中心に~」
小林 秀幸(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長)

14:10~16:20

シンポジウム「精従懇として取り組むべきこと~改正精神保健福祉法施行を目前に控えて~」
座長
精従懇代表 長谷川 利夫、木太 直人
シンポジスト
池原 毅和(日弁連 精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立実現本部本部長代行)
後藤 基行(立命館大学 大学院先端総合学術研究科 准教授)
太田 順一郎(岡山市こころの健康センター 所長)
畠山 卓也(駒沢女子大学 准教授)

16:20~16:30

フォーラム宣言の採択
閉会挨拶